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【号外】酒販業の行方―― 佐藤順一カクヤスグループ社長に聞く

2021/01/18

コロナ禍が酒販業者に突きつけた課題と、なすべき対処は。全国最有力酒販店カクヤスの親会社・カクヤスグループ(東京)の佐藤順一社長に聞いた(以下談)。

消費態様一変への対処が鍵

●2020年の回顧

 当社の業務用販売は、4月は前年同月比八四・六%減、5月は七五・九%減だった。6月は四〇・一%減に戻ったとはいえ、経験したことのない数字。6月中旬までは雇用調整助成金を使って、半分くらいの社員を休ませながらしのいだ。6月後半から通常の業務体制に戻した。雇用調整助成金を使うと、会社は補填されるが、料飲店顧客との接点が劣化する。毎週顔を出せていたのが行けなくなり、二週間に一度になる。顧客の営業状態が悪いうえに、さらなる迷惑をかけたくなかった。

 一方、3月以降、巣ごもりといわれ、家庭用のお届けニーズがすごく増えた。4月の家庭用販売は三四・六%増、5月は四五・九%増だった。それ以降も家庭用販売は伸び続けた。一つには、外で飲まない分、家で飲む。もう一つは、いわゆる「3密」の回避。スーパーが安い価格を出して、それを見比べて買いに行く購買パターンだったのが、持ってきてもらったほうがいい、となった。4~11月累計で家庭用販売は前年同期比二二・七%増だった。

 こうした状況を受けて、業務用配送の人員が家庭用配送に行ったり、センターの人員が店舗に回ったりしてしのいだ。

 家庭用の4~11月累計の二三%増が、23区で地域均等に増えたのならいいのだが、もちろんそうではない。例えば世田谷区や杉並区は五〇%増とか六〇%増なのに対し、中心部の区にある店舗は、業務用だけでなく、家庭用も法人向けもガタガタ。稼いでいた中心部の店が稼げなくなり、それほどでもなかった周辺部、環七通りの外側の店がとんでもなく忙しくなった。ただ、五〇%増となると人のシフトだけではもう間に合わない。基本的に、こなせるのは三〇%増まで。機会損失も少なからずあったと思う。

 業務用の売上げが大きく減り、家庭用が伸びたということは、掛け売りが減って現金が増える。キャッシュバランスはかえってよくなった。4~9月の上期決算で、売上総利益率が〇・八ポイント上昇したのがその象徴だ。業務用と家庭用の売上比率はほぼ半々になった。

●業務用市場の変化

 大手チェーンが苦戦し、独立料飲店が健闘している。前年比の差は大きい。従来はチェーン、大きいところが強いとされたが今は弱い。個人で地道にやっている店が強くなっている。また、従来は人が集まる中心部が強かったが、中心部が悪い。周辺・郊外の客足が多い。これは家庭用にも当てはまる現象。従来の常識は一変した。そこにどう対処するかが問われてくる。

 当社は大手チェーンの比率が約40%と高いので、業務用販売はもっと悪くておかしくないが、周辺部にも配置していた店舗からの独立料飲店に対する「店出し業務」にかなり支えられた。チェーン店向けのセンター物流も稼働件数は数%減まで戻っているが、一件当たりの単価が前年の六掛け程度なのが問題。六割だからといってセンターは決して暇ではないが、車はスカスカ。三〇件で満載だったのが、五〇件ないと満載にならない。

●業務用と家庭用のバランス

 比率半々が続くとすれば、周辺部にもっと店舗が必要になる。「店出し業務」が多いと、家庭用の配達を圧迫することになる。新規出店しつつ人も動かさないといけない。そうしていかないと、注文に応えられない。家庭用は出店ペースを上げていく。特に住宅地立地に加速する。

 東証の業種区分で卸業とされていて、それは業務用の販売形態から。家庭用販売という小売の比率が上がるほうが、投資家にはよく見える。家庭への宅配を広域にやっているのは当社だけで、同業者が多い業務用販売よりも競争優位がある。しかし業務用に力を入れ、業務用比率が高かった。それがコロナ禍で従来の7対3の構造は大きく修正された。このことは、長期的な業務用市場のパイ縮小見通しからも、悪くない方向だろう。

「酒は悪者でない」周知必要

●酒の未来

 コロナ禍で、酒は不要不急のものとして徹底的に悪者にされた。タバコのようになっていく懸念がある。「接待を伴う飲食店」をはじめ料飲店がことごとくスケープゴートにされ、そこさえ叩いていれば仕事した気になっているのが、政治の動きだった。

 これには断固、納得できない。不急については、災害時には確かにそうかもしれない。でも「不要」はないだろう。不要どころか絶対必要なものだ。人はずっと酒を必要としてきた。これは声を大にして言いたい。酒税収入は一兆数千億円に減ってしまったが、それでも、それだけの規模の担税物資。なのに、あたかも悪いものと言われることには納得できない。飲酒によってストレス発散になり、人同士のコミュニケーションがよくなるのは事実。一定の市場は必ず残る。ここできちっとシェアを取り、収益を上げて生き残っていく。

 価格への評価は相対的なもので、人によって異なる。酒単体プラスアルファの価値が必要なのだろう。今までは、量を売りたいからスーパーの店頭を取り、どんどん安くなっていき、商品価値が壊れていった。清酒離れの要因の一つはまちがいなく大容量パックにある。

 清酒をどう売るか。これが当社の数年来の大きな課題だ。ビールと灘・伏見大手銘柄は納入しても、地方酒は専門店に取られる。力を入れなきゃいけない分野だ。難しすぎない、マニア向け過ぎない「道の真ん中」を歩いている地方酒を売るのが課題。「酒は悪者ではない」と、飲酒文化として植え付けるためにも、売っていかないといけない。

 ビール離れもそう。発泡酒になり新分野になり、清涼飲料のほうが高いとなった。クラフトビールが売れている。ビールメーカーには、もう少しプレミアムな方向を打ち出してほしい。生ビールもアメリカではカウンターコックが二〇本くらい立っているのは当たり前。日本は一印。こういうことも文化としていかがなものかと思う。清酒でもそうした提供があっていいのかもしれない。

 それぞれの酒が本来持っているいいところを価格軸がねじ曲げていかないでほしい。儲からないと言われ続けた酒類業界だが、ものすごいボリュームにならなくていいから、きちんと儲かり、お客が喜んでくれるものを売りたい。

 コロナ禍でオンライン飲み会が広がったが、酒はリアルでこそのもの。かけがえのない楽しみがある。年代にもよるだろうが「リアル恋しや」が再発見されたと思いたい。コロナが残したものは色々あるが、やはり、人と人の空間・時間は大事なんだと思った人は少なくないのではないか。そう思ってくれた人たちに、もっと酒の魅力を伝えることが、私たち酒屋の仕事、使命だと思っている。


醸造産業新聞社発行 酒販ニュース1月1日号

掲載している写真は、醸造産業新聞社発行 酒販ニュース1月1日号とは関係ありません。

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